TOP > Column > BRN 2 LRN / サーファーにリスペクトされる存在になるのが理想

Column

940

「人は学ぶために生まれた =Born to Learn 」
当マガジンのスーパーバイザー石丸( J )が、
各界のビジネスリーダーと対談。
数々の学びを含んだビジネストークを発信していきます。
第 4 回は、海への理解と事故を防ぐための教育活動にも力を入れている、
日本のライフセーバーの第一人者にお話をお聞きしました。

 

“ スイム&サバイバル ” 教育で日本の水難事故を1件でも減らしたい

 

J:まずは、ライフセービングというお仕事について教えていただけますか? 具体的にはどんなことができるのでしょう?
飯沼:日本では、ライフセーバーと言っても、アメリカやオーストラリアなどのライフガードのような公務員ではないんです。言ってみれば、夏だけの期間限定の活動で、事故が起こらないように監視するのが主な仕事。自治体が決めた海水浴場でのルール違反をした人に対しても、条例に則って注意するくらいで、それ以上実際に何かができるわけではないんです。

J:注意レベルですか?
飯沼:そうなんですよ。決められた遊泳区域内で事故を未然に防ぐ、というのが日本のライフセーバーの基本なんです。海のコンディションに応じて、遊泳注意や禁止にするのも仕事のひとつで、もちろん何かが起きてしまったらレスキューに駆けつけますが、その時にいち早く救助できる能力を養うトレーニングは常に行っています。
J:日本の水難事故の現状というと?
飯沼:日本では、年間約1500人くらいが水難事故に遭っています。これはここ20年くらいほとんど変わっていません。しかもライフセーバーのいない場所での事故がほとんどです。世界レベルでみると、この日本の現状は、水に関する教育はまだまだ発展途上と言わざるを得ません。若い年齢の方も多く、自分の力を過信して無理をしてしまった結果というのも少なくないので、今後はまずこの数字を減らすことを目標に、教育などにも力を入れているところです。
J:日本では学校でも水泳の授業があったりしますよね?
飯沼:水泳は、日本の子供たちの間でも人気が高く、どんなスポーツや習い事より、常にスイミングが習いたいことのトップで、学校でも水泳の授業があるのに、年間の水難事故の数字が減らないのは、減らそうという教育ができていないからです。でも今年から学校での水泳教育も変わってくると聞いているので、期待しています。
J:反対に世界のトップレベルの教育は?
飯沼:主にオーストラリアですが、5歳からライフセーバーの教育が始まります。ニッパーズというジュニア世代を対象にした大きな教育機関もあり、ここからイアン・ソープらオリンピックの金メダリストを多く輩出しています。ここから競泳やサーフィン、トライアスロンに行く人も多く、小さい頃からの教育がしっかりしているんですね。日本も同じ島国ですから、5歳レベルから教育を始めるべき。向こうは学校へ行く前から、水の中で身を守る“スイム&サバイバル”を教えているので、水の中で自分の身を守る技術が身に付いているんですね。
J:僕もサーフィンを少しやるんですが、1番怖いのは水の中でパニックになることだと思うんですよ。
飯沼:まさにそうですね。日本でも事故が起こるのは、沖のほうではなくて手前50メートルくらいのところが多い。これは突然足がつかなくなってパニックを起こして溺れてしまうんです。水の中で冷静になれというのは難しいですが、小さい頃から水に慣れておけば、事故の数字は確実に減っていくと思います。
J:なるほど。そのために小さい頃からの教育が必要なんですね。
飯沼:自分がライフセービングを始めた頃は、世界で年間約38万くらいの方が水難事故で亡くなっていると聞きましたが、これは約2分に1人が水の事故で亡くなっている計算になるんです。最近では1分半に1人という数字も出てきているようで、残念なことに増えてきているんですよね。これもやはり水泳教育の乏しい地域で多く発生していますから、ライフセーバーとしては心が痛みます。水のある地球に暮らす我々は、海と共存するすべを知っておく必要があるのです。
J:回りを海に囲まれている島というのはハワイも同じですが、大学時代にハワイへ来る機会があったんですよね?

飯沼:はい、大学3年のときの初海外がハワイでした。
J:ハワイの印象はどうでしたか?
飯沼:大会もすごかったんですが、ライフセーバーの存在自体が違うなと思いました。まずビーチにいる人数が違う。圧倒的に少ないんです。でもそれは彼らの能力レベルが高いから守備範囲が広くても安心なんですよね。彼らは公務員で、どちらかと言えば救急救命士に近い存在。職業として確立しているから、彼らのプロ意識も高いです。日本は学生でも浜に立てますが、卒業してしまえば、それまでという人がほとんどです。次の世代に教えられる人が育たないのも問題ですよね。我々も日々の訓練は頑張っていますが、本当に海と人命を守るのであれば、日本でもライフセーバーを職として確立させるのと、教育として学校レベルで取り組むこと推進していかないと、年間の事故数はいつまでたっても減らなでしょう。ハワイのライフセービングの奥深さから学んだことを、ぜひ日本にもって行きたいですね。
J:最近日本では海離れが起こっていると聞きましたが…。
飯沼:そうなんです。きれいなプールのほうがいいという人が増えているのも事実ですが、僕は絶対に人は海に戻ってくると信じています。だからハワイの海に負けないよう、環境保全と安全面を整える努力をしなければいけないですよね。ハワイのビーチの安心感をどうやって日本でも出せるか。みんなが自然とルールを守り、サーファーにレスペクトされる存在がライフセーバーの理想形だと僕は考えています。
J:どうもありがとうございました。

 

石丸路衛

石丸路衛

Profile : HAWAII LOVERS 創設者&編集長 1971年、大阪生まれ、アメリカ育ち。子供の頃は「アメリカ人の間の子」といじめられる。 35歳には「実はあんたの血の半分は韓国人 やねん」とオカンからまさかのカミングアウト。 FB友達申請「石丸路衛」で検索。

おすすめコラム